留学業界の接客業化は留学生にとって不利

私はカナダ留学に関わるお仕事を始めて15年が経ちました、昔より今は少子化の影響もあるのか語学学校で留学するプランで渡航する人数は体感減っていて乱立していた語学学校、留学エージェントはかなり淘汰されたように感じます。私自身がカナダ・バンクーバー現地の留学エージェントの経営者であり役員でありますが、留学生=お客様になっている図式に危機を覚えることがあり今日はそのことについて書こうと思います。

留学がお客様扱いになる理由

日本にある留学エージェントは特にそうですが、色んな国と提携して語学留学・インターンシップ・中高校留学・親子留学・ワーキングホリデーなど色んな商品を扱っています。同じ商品を販売している留学関連の企業・会社はほかにもたくさんありますので自分たちの会社を通して海外留学をしてもらうためにやはり対象の顧客は「お客様」になってしまうことが多いです。綺麗なオフィス、丁寧なカウンセリング、申し込みをするともらえる特典や事前の英会話クラスなど色んな独自のサービスが提供されています。

本来、留学は海外に出て言葉が通じない、文化が違う、日本の常識が通じない、という苦労を経て自分で道を切り開きどんな状況でも生き抜いていけるように留学生自身の努力が必要とされるプロセスです。ただ一昔前から留学に出るのは一つのステイタスとなり、最近では誰でもある程度の意気込みとお金があれば海外留学に行けるような時代になりました。そのためどんな状況でも固い意志で生き抜き国際人になるぞ!というよりは海外に行っても日本のように安心・安全が優先された環境で英語や異文化を味わってみたいというケースが増えたように思います。ゆえにすべてがあらかじめ「お膳立て」されている留学が「良い留学」ととらえられる傾向にあるのだと感じます。

そういった顧客が多くなると日本からは海外の各語学学校や現地でホームステイやサポートを受け入れる日系の会社に「高いカスタマーサービス」を要求するようになります。「ホームステイファミリーはこうでなければいけない」「語学学校にはこういうサポート・サービスがないといけない」「顧客からクレームがない環境を整えて欲しい」「顧客の満足度が上がるように日本式のサービスを提供してほしい」などですね。大人の留学を取り扱うような企業、語学学校であればこれは問題ないですが受け入れ先が日系ではない・もしくは日本人が働いていないようなカナダ現地の学校、高校、大学になると話が変わってきます。日本側の要求とカナダ側の受け入れしている企業での対応度にかなりの温度差が出てきてしまうので一番困るのは日本式に慣れて留学を申込み、海外に出てから一気にその現実に向き合わないといけない日本人留学生と、日本との板挟みになる海外現地で留学仲介をしている日本の留学企業だったりします。

留学の接客業化とホームステイ

それはずばりお客様のために、と思って行動した結果「作られた海外体験・疑似留学体験」になってしまうからです。それで留学生は「お客様」の立場としては満足できる留学になるかもしれませんが、実際その留学生が本来学べるはずだった貴重な成長の機会を奪うことにもつながりかねません。それであれば教育要素を求める留学ではなく楽しみをとことん追求してくれる海外旅行に参加するのが一番だと思います。

例えば「ホームステイ滞在をする時は毎週末に必ず留学生と出かけるようにホストファミリーに事前交渉をしてください。週末に出かけるサービス費用を支払います」と言われることがあります。これはもし日本の留学生が事前に仕組まれたことだとは知らず、ホームステイに来て毎週末ファミリーに何かしらアクティビティに誘ってもらったらどう思うでしょうか。自分は一切努力をせずにホームステイファミリーがお客様として留学生を扱ってくれることが果たして本当に良いのでしょうか?これを読んでいる皆さんにも一度ぜひ考えて頂きたいです。

ホームステイファミリーはもちろん温かい気持ちで留学生を迎えてくれますが普通に考えると赤の他人です。一緒にリビングで過ごしたりご飯を食べるのも初めはお互いが気を遣うでしょうしホストファミリーの生活様式になれるのも一苦労だと思います。でもそこから毎日時間を過ごすことによって食卓で出たトピックから「じゃあ週末その公園に行ってみたいな」とか「サッカーしているの?次の試合は私も見にいっていいかな?」など会話をし時間を共有することによって少しずつ絆が深まり、一緒に行動をする機会も増え少しずつ家族の一員となって生活を送ることが出来る、というのが本来のホームステイの意義ではないでしょうか。「留学生をお客様扱いしてほしい」という要望が出てくるということは、留学生個人の努力はなしに家族が留学生の満足度があがるように「お客様に対する」行動をとることになりそれは一時の満足度に繋がっても、留学生の成長に繋がるとは思えませんしファミリーと真の関係を築くことも難しいでしょう。

でも日本の会社や留学生を送る大学・高校の担当者さんからこういうリクエストが来るのは一度や二度の話ではありません。ここまでではないとしても「日本人留学生が満足するようはホームステイ環境を整えホストになる家族には事前教育を行う」という事項は暗黙の了解として認識されており、受け入れ側はその約束事が守られるように必死に努力する必要があるのが現状です。

接客業化した留学業界の危機と真の留学斡旋とは

留学業界が接客化する、というのは留学生の成長に繋がるか繋がらないかよりも非常に危険なことがあります。それは利益獲得を最優先に考える留学エージェントや海外留学事業を行う企業が出てきてしまう、ということです。本来留学に関するヒアリング・カウンセリングというのは留学を希望している顧客のために行われるものであり顧客のメリット・目標達成が一番に優先されるべきです。ですが、私も多くの残念な例を見てきましたが海外留学に関して知識のない一般の学生さん、社会人の方に「留学エージェントにとって一番利益をもたらす中身のない留学プラン」を紹介してしまうケースが非常に多いのが現状です。例えばどんなものか、というのは紹介された人のバックグラウンドなどにもよりますので軽々しい言及は控えますが簡単なカウンセリングで万人受けするようなすでにすべてがパッケージプランになっているような留学プログラムは一度本当にそれが価値あるものなのか、立ち止まって考える必要はあると思います。

私はカナダの留学についてカウンセリングを行う際は「もしこれが自分の愛する家族や親しい友人、その家族だったら」と考え誠実な仕事をする、というのが根本の仕事流儀であり自分のモットーとしています。留学に関わらず自分の家族には支払う金額以上の体験をして欲しい、価値がある経験をして欲しい、身に付く時間を過ごして欲しいと願うのが当たり前だと思いますが、それを知らない相手にでもできるか出来ないかでその担当者や留学エージェントの価値が図れてしまいます。海外留学をご案内する相手は英語力・予算・性格・目標・目的・期間など全て違いますので、留学は十人十色。全員が同じパターンに当てはまることは皆無です。それを一人ずつのカスタマイズ留学プランを作っていくのが本来私たちの仕事です。

海外や留学の本当の状況を知らない方がそれを見抜くのは確かに難しいと思います、でも「本当に自分のことを考えて言ってくれているのか」はある程度感覚で分かるものだと私は信じています。その人が留学に対してどんな思いを持っているのか、このプログラムを通して私がどういう成長を出来ると思って紹介してくれているのか。留学の商品についての説明だけをされていないか、早い支払いを促されないか、自分の意見はしっかり聞いてもらえているか・・・ぜひ色んな方向からあなたの目の前にいる留学エージェント、担当者を見て最終的にどうするのか決めて頂きたいと思います。

留学を斡旋する、というのはすばらしい仕事ですし私はこの仕事に人生をかけていることを誇りに思っています。そして、海外留学に関する経験と知識を持ってアドバイス・サポートすることに対して対価を頂くことに全く躊躇することもありませんし、一人でも多くの日本人留学生に真の留学を届けるためにはビジネスとして成り立つ必要がありますので経営のことも考えて仕事をする必要があります。でも「利益第一主義」ではなくてもそれは実現しています。相手のことを思う気持ち、というのは必ず通じるものですし日本人留学生の成長を願って真摯に向き合い、知識を蓄え、顧客や生徒と一緒に伴走出来る教育コンサルタント、留学メンター仲間・企業がこれからも増えることを願ってやみません。

カナダ留学・海外留学に出る時に必要な能力

これは少し話がずれるかもしれませんが、日本式に慣れてしまった留学生はいざ海外に来てみるとお客様扱いされないホームステイ、自分から積極的に動かないと何もしてもらえない現地の高校、大学そして日常生活でまずは洗礼を受けることになります。「本当はこうしたいのに」という思いは発言しないと誰も空気を読んだり気持ちを汲み取って対応してくれないので、海外に出るのにまず必要なのは自己主張をする力です。これがないと短期の語学留学では楽しい思いが出来ても長期で海外生活を送ったり正規留学を乗り越えるのはなかなか難しいでしょう。日本では思ったことをハッキリ言うと「空気が読めない」「性格悪い」と言われがちですがカナダや海外では自分の意見をハッキリ言わずに後から何か文句を言ったり不満を抱くほうが人間としての質を問われる結果になります。もし自分がいった意見を相手が違うと思ったらハッキリ「私は違うと思うよ」と言ってくれますし、同じ意見の時は「僕もそう思ってたよ!」とオーバーに反応・賛同してくれるので同じ意思を持った仲間を見つけやすいのは海外留学の一つのだいご味だと思います。

留学業界に長くいるものとして少しずつでもこういう本音を発信していくことによって、悪徳な会社に泣き寝入りするような留学生がゼロになり、留学を志す全員が本来の「留学の素晴らしさ」を体験し自己成長に繋がっていくようなそんな世界を目指したいと思っています。

AN WESTHILL EDUCATIONAL CONSULTING(LIVE YOUR LIFE)代表 西岡 彩

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